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高次脳機能障害

「高次脳機能」とは、大雑把にいうと、手足を動かす運動機能、音やにおい、温度などを感じる知覚機能以外の、記憶・認知・感情・言語などを支配する脳の機能のことを指します。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害の症状は、以下のように多岐にわたります(例示以外の症状もあります。)。

1. 記憶障害

昨日のことを覚えていない、新しいことを覚えられない、約束を忘れる、等

2. 注意障害

気が散りやすい、周囲のことが気になってそわそわする、火を消し忘れる 等

3. 遂行機能障害

ものごとを計画して実行する機能。物事の優先順位を決められない、一つの物事にこだわってしまい次の作業に進むことができない、予期していないことが起きると混乱してしまいパニックになり行動が止まってしまう、等

4. 失語症

話す・聞く・読む・書く、ことができなくなる(何がどの程度できなくなるかは個人差がある。)。

5. 失認症

家族を見ても誰だかわからなくなる、みかんを見ても何かわからない 等

6. 半側空間無視

視界の半側面(多くは左側)が認識できず、食卓の左側を残しているのに完食したという、体の左側をよく柱等にぶつける、歩いていると右側に寄ってくる、等

7. 地誌的障害

よく知っているはずの道で迷う、地図を読めない。

8. 感情コントロール障害(脱抑制・易怒性・性格変化)

熟慮せず衝動的な行動をとる、怒りっぽく感情のコントロールができない、事故前は穏やかな性格だったのに些細なことで怒鳴り散らすようになった、等

初期の検査の重要性

後遺障害として高次脳機能障害が認定されるには、上記のような症状があるだけでは足りません。これらの症状が、「事故で脳に損傷が生じたことにより」発生した、と言えなければならないからです。

この点の判断材料として特に重要視されるは、

1. 事故による脳損傷を示す画像(CT・MRI等)があるか

2. 事故直後に意識障害があり、一定程度それが継続していたか

の2点です。1、2のいずれも、事故発生直後から(原則として)数日内に検査・確認・記録されるべき事柄です。

1.については、明らかな脳損傷があるわかりやすい場合もありますが、そのような場合ばかりではありません。例えば、事故で脳が激しく揺れたために脳の神経細胞(軸索)が広範囲にわたり損傷する、いわゆるびまん性軸索損傷が原因となる高次脳機能障害の場合、その明らかな裏付けとなる「点状出血」は、事故後数日間しか捉えることができません(その後は消失します。)。

したがって、点状出血が生じている間に撮影する必要があります。しかし、点状出血はCTでは確認ができない場合も多く、また事故直後はなかったのに、翌日以降に出血が見られる場合などもあり、検査の方法やタイミングについては慎重な考慮が必要な場合があります。

2. については、救急搬送中に生じていた意識障害や軽度の意識障害が医療記録に記載されておらず、意識障害の証明が困難となっている、というケースもあります。

重大の脳損傷を伴うような場合は、事故直後から回復に向うまで相当な期間を要するのが通常です。そうでない場合でも、事故から相当な期間が経ってから、「何だか事故後人が変わったように怒りっぽくなって、おかしい」などと周囲が感じ障害に気付く、というような場合も多いです。

1、2について十分な検査・記録はないが、障害に気付いたときには既に事故後相当な期間が経過した後だった、などということが起こってしまうことがあるのです。
しかし、最近では、医療技術の進歩により、画像もより鮮明・詳細となっていますし、過去の点状出血を確認しやすい技術などもあります。

症状の把握の難しさ

高次脳機能障害の有無は、見ただけではわかりません。一人で生活できないほどの重度な障害であっても、短時間、初めて会うくらいであれば、その障害に気付かないこともあるほどです。短時間であれば普通にふるまえる(時間が長くなると疲れてしまい(「易疲労性」といいます。)、各症状が噴出する。)、極端な感情コントロール障害など解りやすい症状が出ず(あるいは出たとしても)、個性の範囲と受け止められる、などです。

障害の程度を正しく把握するには、短時間の病院の診察のみでは不十分であり、一緒に暮らすご家族が感じる「日々の生活で生じている問題」を詳細に確認し、分析する必要があります。このような確認・分析作業には、いうまでもなく一定の経験が必要です。

高次脳機能障害以外の、別の障害が隠れている場合もある

味覚障害・嗅覚障害など、本人の申告がなければ気付きにくい障害が隠れている場合がありますので、この点についても注意が必要です。

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